疾患について
アルツハイマー病は認知症を生じる病気で、典型的には短期記憶障害(もの忘れ)から始まり、時間や場所の見当識、空間認知、道具の使用など、さまざまな認知機能が徐々に低下します。初期は「最近の出来事を忘れやすい」「同じことを何度も確認する」など日常生活の変化として気づかれ、進行すると金銭管理や服薬管理に支障が出ることがあります。
また、はっきりと認知症と診断される前段階として軽度認知障害(MCI)があります。MCIは「物忘れは目立つが日常生活は概ね自立している」状態で、すべての方が認知症に進むわけではありませんが、アルツハイマー病の早期像である場合もあるため適切な評価が重要です。診断では、問診に加えて認知機能検査、血液検査、頭部MRIなどを行い、脳血管障害、甲状腺機能異常、薬の影響、うつ状態など他の原因も含めて総合的に判断します。
トピックス
アルツハイマー病では、症状が出現する以前から脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、それが発症に関連すると考えられています。近年、このアミロイドβに働きかけ、進行をゆるやかにすることを目指す治療として、抗アミロイドβ抗体(例:レカネマブ、ドナネマブ)が登場しています。これらは、アルツハイマー病によるMCIや軽度の認知症など比較的早期で、検査により脳内のアミロイドβ蓄積が確認された方が主な対象です。したがって、早期に受診・評価することで治療選択肢として検討できる可能性があります。
一方で、治療には定期的な通院とMRI等による安全性確認が必要で、利益とリスクを十分に検討して進めます。従来からの症状を和らげる治療や、生活支援も病期を通じて重要です。
進行期には、物忘れ以外に意欲低下や興奮などのこころや行動の変化がみられ、ご本人・ご家族の負担が増えることがあります。その場合は、必要に応じて関連診療科や多職種と連携し、環境調整や介護サービスも含めて総合的に支援します。
