当研究では、群馬大学理工学府電子情報部門と共同で、小脳機能を中心とした運動機能の定量評価と運動学習の可視化を目指したVRシステムを開発しています。
VRによる「バーチャル鼻-指試験」の開発
小脳性運動失調では、運動の正確性や速度の安定性が障害されます。重症度評価には診察ベースの評価法であるSARAやICARSなどの臨床スケールが広く用いられていますが、観察に基づく半定量的評価であるため、評価者間で評価が異なることもあり、微細な変化の検出感度にも限界があります。
そこで我々は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)型VRを用いた「バーチャル鼻-指試験」を開発しました(図1・2)。VR空間内で基点と目標点の間を往復する上肢運動を行い、指先の三次元軌跡を高精度に計測します。


VR空間で基点と目標の間に手を伸ばす動きを繰り返してもらい、指先の軌跡を三次元で高精度に計測します。そのデータから、目標にどれだけ正確に届いたか、どのくらい効率よく動けたか、目標を行き過ぎていないか、動く速さが安定しているかを数値化し、運動失調の程度を客観的に評価します。
図3は、コントロール群(上肢に明らかな運動障害のない方)と運動失調群(運動失調のある患者さん)における指先の軌跡の例を示しています。コントロール群では安定した直線的な到達運動がみられるのに対し、運動失調群では軌跡のばらつきや蛇行、到達精度の低下がみられます。

この評価では、運動失調のある方では手の軌道が乱れていたり、目標に行き過ぎていたり、動く速さのばらつきが大きいことを客観的に捉えることができました。これらの数値は、従来よく使われているSARA、ICARSの重症度ともよく対応しており、健常な方との違いを高い精度で捉えられることが示されました。
さらに、本システムは持ち運びがしやすく、カメラやマーカーを体に取り付ける必要がなく、座ったまま安全に実施できます。そのため、歩行が難しい方や高齢の方、日常生活動作が低下している方にも応用しやすい評価法です。
