研究の背景
高齢化に伴い、認知症の早期診断と進行予測の重要性はますます高まっています。とくに軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)や軽症認知症の段階では、どのような因子が認知機能低下と関連するのか、またどのような画像所見が将来の進行と関係するのかを明らかにすることが重要です。群馬大学医学部附属病院脳神経内科では、MCIおよび軽症認知症の患者さんを対象に、臨床情報と脳画像をあわせて解析し、認知症の早期診断・進行予測に役立つ因子を検討しています。
研究の方法
当科は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)の認知症関連臨床研究に参加し、詳細な臨床データを蓄積してきました。これらの基盤を活かし、現在は前向き観察研究として、年齢、既往歴、生活習慣、身体機能、神経心理検査、合併症、投薬内容などの臨床的因子を継続的に評価しています。
MRIを用いた脳萎縮評価
頭部MRIが施行されている患者さんでは、画像解析ソフトFreeSurferを用いて、海馬を含む各脳領域の容積を定量的に評価し、認知機能低下や日常生活機能との関連を解析しています。また、MCIから早期認知症に至る過程における脳萎縮の特徴と、その背景にある因子についても検討を進めています。
研究の目的と今後の展望
本研究の目的は、MCIや軽症認知症の段階における脳萎縮の特徴と、それに関連する臨床的因子を明らかにすることです。加えて、継続的に収集したデータを用いて、MCIから認知症への移行を予測する脳萎縮パターンの同定も目指しています。これにより、認知症の早期診断や進行予測の精度向上に貢献するとともに、新たな画像評価法の開発につながることが期待されます。
これまでの研究とのつながり
私たちのグループでは、アルツハイマー病における脳の虚血性変化や大脳白質病変(White matter lesions:WML)が認知機能に与える影響を研究してきました。これまでの研究では、脳虚血変化が強い患者さんでは、脳アミロイドβ蓄積が比較的軽度であっても認知機能低下を来しうること、またWMLの重症度が認知機能低下と関連することを明らかにしてきました。アルツハイマー病ではアミロイドβの蓄積だけでなく、脳の虚血性変化や微小血管障害も認知機能に関与することが示されており、血管危険因子の適切な管理が認知症予防につながる可能性があります。現在進めているMCI・軽症認知症の研究も、こうしたこれまでの知見を基盤として発展させたものです。

