General review
MRI characteristics of MOG-Ab associated
disease in adults: An update
:成人におけるMOG抗体関連疾患のMRI特性
Shor N, et al. Rev Neurol.
2021;177(1-2):39-5
Introduction
MOG抗体関連疾患(MOGAD)とMS、AQP4-NMOSDの3疾患は、経過や治療方針が異なるため、その区別が重要である。稀ではあるが、MOGADは成人においてAQP4-NMOSDよりも3倍頻度が高く、MSに次ぐ炎症性視神経炎の原因であると考えられている。MOG抗体に特異的なアッセイは未だ広く利用されておらず、3疾患の早期鑑別に役立つ放射線学的特徴の確立が重要である。本論文では、MOGAD成人患者の視神経、脊髄および脳のMRI所見をMS、AQP4-NMOSDと比較する。
①視神経炎のMRI所見
MOGAD AQP4-NMOSD MS
MOG関連視神経炎(MOG-ON)はMOGADを有する成人において最も頻度の高い疾患である。典型的なMOG-ONは視神経の腫脹として確認され、MRIT2強調画像で高信号と異常造影を伴う。また、MOG-ONは通常、広範囲(視神経の長さの半分以上)、両側、前方病変をきたす。48.9%-80%の割合では視神経乳頭浮腫を伴うことも知られる。視神経鞘と眼窩脂肪の増強が円周状に認められる視神経周囲炎(OPN)をきたすことも特徴である。
<MS,AQP4-NMOSDとの比較>
・MS-ONは病変長が短く、両側性の頻度が低い。
・AQP4-NMOSDでは後方病変(視交叉や視路)の頻度が高い。
②脊髄炎のMRI所見
MOGAD AQP4-NMOSD MS
脊髄炎は成人のMOGADにおいて2番目に頻度の高い症状である。稀ではあるが脊髄MRIで正常所見を呈するのも、MOGADの特徴として考えられる。また、36-86%の患者でT2高信号病変の完全消失が報告されている。
<MS,AQP4-NMOSDとの比較>
・MOGADでは病変は3椎体以上にわたることが多く、しばしば脊髄腫脹を伴う。
・MOGADの病変は主に頸椎および/または胸椎レベルに存在するが、腰椎や脊髄円錐レベルの病変も稀ではない。
・MOGADとAQP4-NMOSDは、病変がびまん性で中心部に寄る。
・一方で、MSの病変は小さく、背側に寄る。
・MOGADでは、軸位面でT2増強が灰白質に限局する“H sign”を形成する。
・AQP4-NMOSDで特徴的な明るい斑点状の病変はMOGADでは稀である。
・MOGADでは脊髄萎縮は稀である。
③脳のMRI所見
MOGAD AQP4-NMOSD MS
MOGADの病変が視神経や脊髄を越えて拡がることはよく知られているが、成人の患者集団において、脳病変のみを呈するパターンは殆ど見られない。MOGADの脳病変は、脳白質(局所性またはびまん性病変)、脳幹、大脳皮質の3つの病変タイプに大別される。
<MSとの比較>
・MSでみられる脳病変(側脳室に隣接する卵円形病変、T1低信号、Dawsonの指)がMOGADでみられることは稀である。
・MOGADでは脳病変は3つ以下であることが多い。
・MOGADでは、白質に少数の“fluffy”病変が見られるのが特徴的。
<AQP4-NMOSDとの比較>
・前提として、MOGADの脳病変をAQP4-NMOSDと識別するのは困難である。
・しかし、AQP4-NMOSDを示唆する第三脳室周辺部、脳橋周囲、後頭部領域の病変はMOGADでは稀である。
・MOGADでは脳病変が消失することもいくつかの研究で報告がある。
Future directions
視神経炎について、MOGAD患者では視力は保たれることが多いものの、特にAQP4-NMOSD患者と比較して顕著に視神経萎縮を認める。拡散強調画像や機能的結合性MRIなどの高度なMRI技術を用いた更なる研究が必要である。また、脊髄画像について、3D脊髄画像がMOGADにおける短い病変の検出に役立つ可能性がある。MOGADの脊髄炎は長期予後が良好で、脊髄病変の消失率が高いが、これは組織破壊の程度が低いことと関連する可能性があり、脊髄スペクトロスコピーが有用と思われる。